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日常と好きなもの。活字中毒ブログ。
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七月三日  曇り

いつもとは違うスーパーに出向く。
青菜が、わしわしと袋詰めにされており、ミニトマトがざるで売られている。
葱も四本束でしか売られていない。一本でいいのにと思いながら、安いので買う。
やたらと買いこんだので五千円はいくかと思いながら会計をすると、三千円だった。なかなか安いスーパーである。

会計を済ませ、袋に積めようとすると張り紙に気付いた。
「ごぼうや泥ねぎ、おはじき(特に赤 )の忘れものが多くなっております。お気をつけください。」

なるほど、かごを置いた脇に赤いおはじきが三枚忘れられている。
お会計をしてくれたお兄さんに渡すと、レジの下から果実酒づくりに使うような赤いふたの、大きいガラス瓶を出してきた。
中にはおはじきがみっしりと詰まっているが、ほとんど赤いおはじきである。
「また赤かぁ。」
と、残念そうに呟いている。
「黄色がなかなか無いんですよ。」
なんだか申し訳ないことをした気になる。
今度の夏祭りではおはじきを買おう。
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六月二十八日 曇り 

割合に色白な方である。
ふと気がつくと、右腕が、まあるく朱く染まっている。
朱色ともオレンジ色ともつかぬ色である。
触れても熱くはなく、灼いた覚えもない。

よくわからないので、町内会長さんのところに聞きに行く。
「これは夕焼け染みだねぇ。」
「はぁ。」
「夕暮れ頃散歩したんじゃないかい。太陽は沈むのが寂しくって、赤子連れに欠片を移すんだよ。」
確かに、日射しを避け、昨日は夕暮れに散歩した。
「放っておけばよいのでしょうか。」
「まぁそれでもいいけど、橙を張り付けとくとすぐ消えるよ。」
橙など、八百屋でも見たことが無い。
「家の庭になってるのを持っていくといい。」
町内会長さんは、庭に出て、手の平ほどの橙を持ってきた。
「橙は代々続くからきてるんだよ。もがれなければ、次の季節までなって、新物にまじっちまうんだよ。」
橙は、つるりと私の手に収まった。
「これもこの春、一度緑に戻ったやつだね。」

町内会長さんによくお礼をいい帰ろうとすると、いそいそと包みを渡された。
「今日で息子さん百日でしょう。祝いの紅白餅だよ。」
他人の息子の百日祝いまで把握するのが、町内会長さんの仕事らしい。
深く感銘をうけて家路についた。
六月二十七日   晴れ

日の照る中、乳飲み子の息子と散歩に出る。
公園にクローバーの群生を見つけた。
寝返りもうたぬ息子を、木陰にころりと転がし、四つ葉探しを始める。

四つ葉は香りがする、と昔聞いたのを思い出し、鼻をすりつけながら地面を這う。
「あなたがお探しなのはこれですか。」
振り返ると、琥珀のループタイをつけたご老人が、四つ葉を差し出していた。
「そうです。」
ご老人は、ついと四つ葉を渡そうとする。
「よいのでしょうか。」
深く頷くご老人から四つ葉を受け取る。
すると、たちまち四つ葉は砂と消えた。
「自分で探さないといけないのでしょうね。」
「どうやらそのようですね。」
ご老人が残念そうに首をかしげ、会釈をして去ってゆく。

もう帰ろうと息子を抱き上げると、息子の手には四つ葉が握られていた。砂にしてしまったら申し訳ないと、四つ葉には触れないように気を付けて帰る。

家に着き、乳を与えていると、飲みきれず垂れた乳が桃色だった。ぺろりとなめると氷いちごの味がする。
息子の幸運はこれだったのかと納得する。
息子の手を見ると、四つ葉はもう消えていた。
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自己紹介:
25歳 
旦那・息子(8ヶ月)と3人暮らし

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